研究課題
若年性骨髄単球性白血病(JMML)の特徴として白血病細胞の顆粒球・マクロファージ刺激因子(GM-CSF)への過剰反応があげられる。白血病細胞に少量のGM-CSFを添加して培養すると過剰にコロニーが形成され、診断に用いられている。しかしこれらの検査には熟練した技術と大きな労力がかかる。そこでわれわれは(3)H-thymidineアッセイを用いてより簡便でかつ定量的なGM-CSF過剰反応を判定する方法を検討した。JMML患者の骨髄または末梢血からCD34陽性細胞を分離しGM-CSFを添加して10日培養したのち、培養細胞の(3)H-thymidineの取り込みをscintillation counterにて測定した。JMML細胞では正常細胞に比べて著しい(3)H-thymidineの取り込みが見られた。またRAS遺伝子変異をもつJMML患者はPTPN11遺伝子異常を持つ患者よりも強い反応が見られた。この方法は従来のコロニー検査に比べて簡単でありさらに、定量性もあり、診断に有用であると考えられる。GM-CSFへの過剰反応の原因としてJMMLの約7割の患者の白血病細胞において、GM-CSFレセプター/RAS/MAPK系伝達経路に位置する3つの遺伝子 : PTPN 11、RAS、NF1のいずれかの変異が見られる。日本の71例のJMML患者においてそれぞれ45%、16%、4%に異常がみられた。PTPN 11遺伝子異常のある患者は、そのほかに比べて診断時年齢が高く、HbFが高値で、かつ生存率が低い特徴がありJMMLの予後因子となると考えられた。また日本小児血液学会骨髄異形成症候群(MDS)委員会の中央診断にJMMLまたはMDSの疑いで登録のあった4例の男児がその後の経過で先天性免疫不全症候群であるWiskott-Aldrich症候群(WAS)と診断された。WASP遺伝子変異を確認し、フォローサイトメトリーにてWASP蛋白発現の欠損を証明した。過去にこのような報告はなく現在論文作成中である。過去のJMML疑いの男児の骨髄検体のうちPTPN 11、RAS遺伝子異常を認めなかった症例8例においてWASP蛋白の発現を検討したが、異常は認めなかった。
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Pediatric Drug (印刷中)
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