研究概要 |
Bartter症候群(BS)、Gitelman症候群(GS)は常染色体劣性尿細管機能異常症で、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、高レニン、高アルドステロン血症などを特徴とする。現在までにI型からV型BSおよびGSの原因遺伝子が既に明らかにされている。日本人におけるこれらの疾患を有する患者において、臨床的および遺伝学的検討はこれまで行われてこなかったが、私たちは今回の研究で、現在までに34例で遺伝子解析による確定診断を行ってきた。内訳は1型11例、II型2例、III型9例、IV型1例、GS11例であった。その結果、典型例ではそのほとんどで遺伝子変異を同定することができ、本疾患においては遺伝子診断率が高い疾患であることが分かった。また、解析方法に関する工夫を行い、尿中落下細胞からmRNAを抽出し、RT-PCRを用いて解析を行うという非侵襲的かつ斬新な方法を導入することで、遺伝子診断率を向上させることに成功し、英文学術誌に投稿を行った(Pediatr Res 2007、Am J Kidney Dis,2008 in press)。さらに、これまでこれらの疾患で遺伝子診断率が低かった原因として、従来の直接シークエンス法による解析では広範囲のヘテロ接合体欠失の検出はできず、BS患者においてはこの変異が多いためであることを明らかにした。そこで、PCR半定量法を導入することで、それらの変異の検出に成功した(Pediatr Res.2007)。また、日本人においては2型BSの報告例はこれまで1例もなかったが、2型BSでは低カリウム血症を認めない症例もいることを明らかとし、診断がついていない症例の存在の可能性を明らかとした(Pediatr Nephrol2007)。現在まで私たちは90%以上の患者において遺伝子変異の検出に成功している。更なる症例の蓄積を行い、日本人におけるこれらの疾患の患者の特徴を明らかとしていく予定である。
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