川崎病は何らかの要因により惹起された筋型中小動脈の汎血管炎とされる。川崎病の治療目標は冠動脈病変を残さないことにあるが、大量ガンマグロブリン療法・ステロイド療法など既存の治療にもかかわらず依然として川際病罹患児の約10%に冠動脈病変を合併する。一方、血管内皮増殖性因子 (VEGF) が川崎病冠動脈瘤合併の危険因子の一つとして報告され注目されている。VEGFにはいくつかのサブタイプがあることが知られているが、その一つであるVEGF-1の受容体として知られるFLT-1が川崎病急性期に血管内皮細胞で発現が増加するとの報告がある。Flt-1のsolubleformであるsFLT-1はVEGFのアンタゴニストとして作用する。そこで、sFlt-1 (可溶性VEGF-1受容体) の遺伝子導入によりVEGF機能を抑制することで川崎病冠動脈瘤の発症を予防できるかどうかを、川崎病モデルマウスを用いて病理学的に検討し、その結果をもとに川崎病性冠動脈病変の遺伝子治療を目指す。川崎病モデルマウスとしては、Candida albicansアルカリ抽出物質であるCAWSを用いた。まず、CAWSをマウスに腹腔投与し、マウス血漿中のVEGFおよびsFLT-1の経時的変化を測定した。両者ともにCAWS投与後に急上昇し、投与10日後には正常化した。準備実験として、C57/BL6マウスに、sFlt-1プラスミドの筋注もしくはsFlt-1遺伝子搭載センダイウイルスベクターを鼻腔内投与あるいは筋注したが、血漿中のsFlt-1の上昇は認められなった。
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