自閉性障害の病態にエピジェネティクス機構の異常が関連すると推定される。よって、自閉性障害の病因、病態解明を目的として、自閉性障害(ASD)患者において、Rett症候群の病因遺伝子MECP2により不活化が調節されている遺伝子の変異と発現変化の有無を解析した。 (方法)対象遺伝子はSGK、DLX5、同じDLX遺伝子でDLX5に隣接するDLX6、およびMECP2結合部位近傍に局在するPEG10。 インフォームドコンセントが得られたASD患者より採血し、リンパ球抽出、EBウィルスにより芽球化し、DNAを抽出し遺伝子変異の有無を解析した。また、RNAを抽出しcDNA作製、TaqMan probeを用いたReal-time PCRで、発現の変化を解析し、ASD患者での発現の変化を、正常コントロール、Rett症候群患者と比較し検討した。 (結果)Real-timePCRを用いた遺伝子発現解析では、SGKで、ASD患者、Rett症候群患者ともに、正常コントロール群よりも発現が増加しており、特にASD患者で増加していたが、他の遺伝子では、ASD患者、Rett症候群および正常コントロール群で特徴的な発現パターンを示さなかった。 遺伝子変異解析では、DLX5、ASD発症に関与する変異は検出されなかった。DLX6のexon3にR219H変異を64検体中2検体で検出した。 (考察)リンパ芽球を用いた解析にて、ASD患者でDLX5の発現はコントロールと変化がなかった。リンパ球を用いた解析であるが、DLX5は、リンパ球でもMECP2により発現調節されていることが報告されており、この領域のimprintingの異常が発症に関与する可能性は低い。一方、DLX6にmissense変異が検出され、さらにASDとの関連の解析が必要である。今後、さらに遺伝子不活化を受けている遺伝子を解析して行く予定である。
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