研究概要 |
具体的内容 1. whole-mount in situ hybridization法により、胎生8.5日から10.5日のマウス胎仔の咽頭弓、卵黄嚢血管、胎仔血管における1型および3型イノシトール三リン酸受容体(IP_3R)の発現様式を観察した。1型は、胎生8.5日から咽頭弓に発現し胎生10.5日まで発現が維持されていた。3型も胎生8.5日から咽頭弓に発現し、胎生10.5日には咽頭弓と末梢血管に比較的高く発現していた。 2.1型、3型IP_3Rダブルノックアウトマウス(1,3DKO)の血管構築を実体顕微鏡下に観察した。 1,3DKOは胎生9.5日に卵黄嚢上の原始血管叢の形態異常と胎仔発育遅延が認められ胎生10日頃に死亡した。 3.1,3DKOと同腹の正常対照に対し、抗血管内皮マーカー(CD31)抗体によるwhole-mount immunohistochemistry(IHC)と、抗血管平滑筋マーカー( α smooth muscle actin, αSMA)抗体による切片IHCを行った。 1,3DKOにおいて胎生9.0日の卵黄嚢上の原始血管叢の形成不全と、胎生9.5日の背側動脈におけるαSMAの発現低下が認められた。 結果の意義、重要性 本研究の目的である咽頭弓と血管系の発生におけるIP_3Rの役割を解明するための基礎となるIP_3Rの咽頭弓と血管における発現を確認できた。さらに、1,3DKOの血管異常を再現性をもって確認し、胎仔の発育遅延が顕在化する前に既に卵黄嚢上で血管異常が生じているという結果を得た。この結果は、1型と3型IP_3Rが脈管形成(vasculogenesis)に重要な役割を持つ可能性を示唆する。
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