研究概要 |
我々は新たな細胞供給源として,子宮内膜及び骨髄,臍帯血,胎盤,羊膜由来の間葉系細胞に着目し,骨格筋の再生について検討を行った。現段階では間葉系細胞の表面マーカーは細胞の分化過程で,その発現がどのように変化していくのかに関して詳しい検討がなされているとはいえず,間葉系細胞を用いた再生医療を汎用性のある一般的な医療にしていくには,移植の材料である間葉系幹細胞の性質をよく知る必要がある。 今年度はヒト骨髄間葉系細胞の調製とプロファイリングと,疾患モデルマウスへの移植に必要な基礎データを得ることを主目的として研究を進めた。 具体的には,個々の間葉系細胞を,10%の牛胎児血清を含むDMEM培地で培養し,継時的に細胞数を計数して増殖曲線を作成することにより,間葉系細胞の増殖能を調べている。また,細胞分裂回数の増加に伴って,染色体に異常が生じるかどうかを調べていく。このことは,細胞移植した細胞が将来的にガン化する可能性があるか否かを検討する上で重要である。さらに,個々の細胞を筋肉細胞への分化能を測定した。invitroの検討により,骨格筋への誘導により子宮内膜細胞の骨格筋マーカー(MyoD,Desmin,Myogenin,Dystrophin)の発現をmRNAとタンパク質レベルで確認した。さらに,これらの子宮内膜細胞を免疫不全の筋ジストロフィモデルマウスであるMDX/SCIDマウスに移植することによりヒトdystrophin(マウス由来dystrophinと反応しない)陽性の骨格筋の発現も確認した。 次に,細胞のプロファイリングを行うため,フローサイトメトリーを用いて,ヒト骨髄間葉系細胞の表面マーカーの発現の検討を行なった結果CD13,CD29(integrin b1),CD44(Pgp-1/ly-24),CD54,CD55,CD59,CD73,CD90(Thy-1),CD105(endoglin)が陽性で,CD14,CD31(PECAM-1),CD34,CD45(leukocyte common antigen),CD50(ICAM-3),CD117(c-kit),CD133が陰性であった。また,gene arrayの検討は完了し,今現在は個々の間葉系細胞において発現している遺伝子の網羅的な解析をしている.
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