研究概要 |
拒絶反応を考慮すると、臨床応用できる幹細胞は患者自身の体細胞に由来細胞という条件を満たす細胞であると考えられる。しかし、筋ジストロフィーなどの遺伝子疾患の治療には限界がある。一方、妊娠成立と維持に母子間のHLA typingの一致は必要ではないと言われている。胎児が母体から拒絶を受けない理由として、胎盤細胞に発現するHLA-G, HLA-Eがそのレセプターを通じてNK細胞と作用し、NK細胞の細胞障害を抑えることで免疫拒絶反応を抑制すると考えられる。 そこで、今回初めに、胎盤由来細胞のHLA-Eの発現をGene Chipを用いた解析で調べた。その結果、胎盤由来細胞のHLA-Eの発現は他の細胞と比べ明らかに多いことを確認した。 成体幹細胞の細胞表面マーカーの発現に関しては充分な検討が現在のとこころなされていない。これらの情報は、各組織由来間葉系細胞の分化能を有する状態を保つ培養条件、方法などを確立する上で極めて重要である。次に、フローサイトメトリーを用いて、ヒト骨髄間葉系細胞の表面マーカーの発現の検討を行なった。その結果、CD29, CD31, CD44, CD59, CD73, CD105, CD166ポジティブ; CD45, CD106, CD117 (c-kit)ネガティブなど種々の間葉系幹細胞の表面マーカーの発現を確認した。 次に、In vitroにおける骨格筋分化の検討では、新生児マウス胸線細胞と胎盤由来細胞を共培養することにより、胎盤由来細胞の骨格筋の初期、後期マーカー発現を確認した。更に、In vivoにおける胎盤由来細胞の骨格筋細胞への分化と免疫寛容について検討するため、"immunocompetent"。マウスであるBalb/c或いはmdxマウスを用いた移植細胞の骨格筋再生能を検討した。その結果、Balb/c、mdxマウスともに骨格筋中にヒト・ジストロフィンの発現を確認した。
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