研究概要 |
以前に行った11〜24ケ月の乳幼児の親子12組の行動観察より,テレビ視聴時の児の反応行動は親子のコミュニケーションの契機となるが,生起する場面が多くの児で共通し,反応行動を生起し易い場面属性がある可能性が示唆されたので,本年度は行動観察で使用した12分間の呈示ビデオを1カットで区切った67場面の属性を評定し,また,児の反応行動を秒単位で書き起こして,両者の関連性を解析した。 1.児が視聴した場面はしなかった場面に比して,登場人物がアップで登場、視聴者に向って笑顔で語りかける・歌う,映像が明るく楽しい,効果音がある率が有意に高く,登場人物が動物のみ・横向き,音声が歌のない音楽のみである率が有意に低かった。 2.各反応行動の出現率が各属性を有する場面の方が該当しない場面より有意に高率であったのは,感情表出や発声の出現は登場人物が視聴者に話しかける揚面,歌、台詞の模倣は登場人物が笑顔で歌いかける場面,リズムをとるのは登場人物が歌いかけて音楽が目立つ場面,動作の模倣は登場人物が視聴者に笑顔で歌いかけたり一緒に踊ることを促す場面であった。 以上のように,視聴及び反応行動の出現は場面属性と関連し,画面の登場人物が視聴者に語りかけたり歌いかける場面で多く視聴して反応行動が生じ,親子のコミュニケーションに繋がることが示唆された。集団調査における1歳6ケ月児の言語遅れとテレビ長時間視聴との関連性,言語遅れ児が多く好むビデオソフトは,画面からの働きかけが少なく且つ映像変化が多く,長時間傍観的に視聴し易い属性を有すること(科研費16591070)と今回の結果と考え合わせると,画面からの働きかけが少ない番組やビデオを長時間視聴するとコミュニケーションが減少し,児の言語発達の遅れに影響する可能性が考えられる。次年度は,上記の結果と脳血流動態との照合を行い,テレビ視聴の影響を脳科学的に検討する
|