2003年に行った1歳半児の集団調査から、言語遅れ児が多く好むビデオソフトは長時間傍観的に視聴し易い内容特性を多く有すること、前年度の乳幼児の視聴時の行動と場面属性との解析から、児はヒトが視聴者向きで笑顔で登場する場面をよく視聴し、多くの反応行動を示すことが判明した。そこで、視聴内容による脳活動の相違を検討するため、近赤外線スぺクトロスコピーを用いて成人の脳活動計測を行った。 1. 20〜40歳の男女7名を対象に、言語遅れ児が多く好む代表的ソフト(遅れV)と遅れ無し児が多く好む代表的ソフト(遅れなしV)を2分間ずつと、前後と間に30秒間の風景静止画像を挟んで繋いだビデオを視聴中の前頭部(4×4、24チャンネル)を計測し、対人関係や社会性に関与すると考えられている眼窩前頭部付近のchについて調べた。視聴中はいずれの協力者も数カ所で血流上昇(数秒間上昇し、下降)がみられ、頻度は遅れなしVの方が遅れVよりも有意に多かった(p<0.01)。上昇箇所は多くの協力者で共通し、97.4%は視聴者への語りかけがある場面であった。視聴中の平均Oxy-Hb量は、風景静止画像に比して、遅れなしVでは5名が有意に増加したが、遅れVでは4名が有意に減少した。視聴内容によって脳活動が異なる可能性が示唆されたため、今後は測定部位を追加して詳細に解析し、発達-の影響を検討する。 2. 20〜40歳の女性3名を対象に、上記の行動観察で使用した12分間の呈示ビデオ視聴時の前頭部と両側頭部、後頭部を計測した。場面属性と血流動態の関係を調べたところ、いずれの協力者も全場面を通して第一次視覚野付近の血流量が上昇し、ヒトが視聴者向きで笑顔で歌い踊る場面で前頭部の血流上昇頻度が多い候向が見られた。今後例数を増やし、上記の乳幼児の視聴時の反応行動の解析結果との照合を行う。
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