研究概要 |
予備実験(平成18年度)において既成の膜型肺(膜面積>0.400m^2)では血流抵抗が大きく十分な回路血流量を確保できなかったため,本実験では先ず膜面積が小さく血流抵抗の少ない膜型肺(膜面積0.05m^2, 0.075m^2)を開発した(泉工医科機器株式会社).作成した膜型肺の性能を確認するため,ヒツジ血液をHt値20〜50%に調整して人工胎盤回路の圧-流量関係を計測した(in vitro).その結果,Ht値20〜25%で平均動脈圧40〜50mmHgであれば,生理的胎盤血流量(>100ml/kg/min)と同等の血流量を得られることが確認できた.続いて,ヒツ胎仔(妊娠130日)を用いた慢性実験系を作成し(in vivo,n=6),Ht値20〜25%のもとdopamineを持続投与すれば,駆動ポンプを用いることなく回路血流量>100ml/kg/minを維持できた.また,動脈血酸素分圧を20〜25torrに管理すれば,動脈管を収縮させることなく十分な右左短絡血流を維持できることが超音波断層画像ならびにドップラー波形から確認できた.現在,colored-microspher法を用いて各臓器の血流量を解析中である.一方,この膜型肺は膜面積が小さいために酸素化能が弱く(aAPo_2 0.02〜0.04),貧血性低酸素(content O_2 2.1〜4.0mmol/L)も加わったため胎仔に高乳酸血症が遷延した(100〜200mg/dl).重炭酸塩ならびに種々の循環作動薬を投与してもアシドーシスが進行したため,本人工胎盤を装着してヒツジ胎仔を12時間以上生存させることは出来なかった.来年度の実験では膜型肺の性能(血流抵抗・酸素化能・換気能)を改善しつつ臓器血流量を維持するための新たな循環管理法を開発したいと考えている.
|