臍帯血のには造血幹細胞が多数含まれており、現在では血液腫瘍患者の移植に数多く利用されている。近年、臍帯血中のCD34陽性細胞は血液幹細胞としての機能以外に、様々な実質臓器に分化可能であることが明らかになってきている。今回、臍帯血CD34陽性細胞がin vitro環境下で肺II型上皮細胞に分化しうるかを検討した。 方法 臍帯血CD34陽性細胞をMatrigelでcoatした、well培養plate上で、気管支上皮細胞培地(BEGM)に5%活性炭処理FBSを加えたものを培養液として、37℃、5%炭酸ガス使用下で培養した。培地は2日に一度交換した。臍帯血幹細胞から肺上皮細胞に分化する際の至適KGFの濃度や、ステロイドホルモンの必要性について検討した。 KGFの濃度は結果に示す。ステロイドホルモンについては添加群と非添加群に分け検討した。培養期間中、実体顕微鏡で細胞の増殖状態を観察した。また、培養液中のサーファクタント蛋白-A(SP-A)をELISA法にて定量した。 結果 FGF-7 Ong/ml、5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、50ng/ml添加、ステロイドホルモン10mg/ml添加の有無にかかわらず、細胞の形態に変化は認められなかった。12well plateを用い、7日間の培養後の観察では細胞増殖が悪く、形態にも変化が認められなかったため、24well plateでの培養に変更、観察期間を14日に延長した。細胞増殖はFGF-7の投与量が多い方が良好な印象であったが、細胞の形態に変化は認められなかった。 24well plateを用いた14日間培養後の培養液を用いた検討では、FGF-7の投与量、ステロイドの投与の有無にかかわらず、SP-Aの産生は認められなかった。 考案 今回の実験系では、いずれの条件下でも、臍帯血幹細胞は肺上皮細胞に分化し得なかった。今回の条件により肺II型上皮細胞への分化が誘導できなかった原因としてCD34陽性細胞から肺上皮細胞への分化の誘導にはFGF-7以外の成長因子(HGF等)が必要である可能性や線維芽細胞との共培養や気相に面した環境が分化に必要である可能性が考えられた。今後これらの条件下での培養実験を検討する予定である。
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