平成20年度は呼吸リズム形成過程について新生仔(P0〜P7)の正常動物を用いて検討した。まず始めに、KCC2ノックアウトマウスと比較する目的で、新生仔(P0〜P7)正常動物を用いて、pre-Botと舌下神経核を含む延髄のスライス標本を作製し、舌下神経核から自発的な呼吸様リズム性神経活動を記録できる急性スライス標本作製方法を確立した。また、新生仔KCC2ノックアウトマウス(ヘテロ接合体 : P0-7)を用いて、pre-Botと舌下神経核を含む延髄の急性スライス標本作製方法を確立した。舌下神経核から得られた呼吸様リズム性神経活動がKCC2の阻害剤であるフロセミド(furosemide)により、変化することを明らかにした。ここで、フロセミドの投与はHubnerらが報告したKCC2ノックアウトマウスより得られた結果とは異なっていた。つまり、呼吸様リズム性神経活動においては、KCC2の機能を正常動物で阻害することと、KCC2ノックアウトマウスにおいて得られる表現型は同一ではなく、このことは様々な要因によりノックアウト動物で呼吸不全が引き起こされていることを示唆している。これらの相違が何に起因するのか、新たに明らかにすべき検討課題が生じ残されてはいるものの、本申請課題の研究目的をほぼ達成できたと考える。
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