研究課題
低酸素性虚血性脳症の興奮毒性により産生されるプロスタノイドが神経変性に重要な働きをしていることが知られている。本研究は興奮毒性試薬カイニン酸を用いて、実験的低酸素性虚血性脳症モデルラットを作製し、プロスタノイドの産生抑制を機軸とした治療戦略を開発することを目的に研究を行った。これまでの検討において、カイニン酸を投与したラット海馬において、初期相と後期相で構成される二相性のプロスタノイド産生が起こることを報告しており、昨年度は二相性プロスタノイド産生(初期相・後期相)が共に神経細胞傷害に関与することが示された。本年度はこれまでに報告されていた急性期神経細胞死、遅発性神経細胞死と本モデルラットで新たに観察された持続的神経細胞死の解析を行った。プロスタノイド産生は急性期神経細胞死にはあまり関わらず、ミクログリアを活性化することによる海馬微小環境を細胞毒性状況にすることにより遅発性・持続性神経細胞死に関わり、またそれはカルパイン-カテプシンカスケードを解したネクローシス様神経細胞死であることが示された。興奮毒性の初期におけるプロスタノイド産生、とりわけその後期相を抑制することによって、神経細胞死の抑制が可能であったことは、低酸素性虚血性脳症の興奮毒性による神経細胞死がプロスタノイド産生抑制により予防、治療できる可能性を示された。
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Neurochem. Res. (印刷中 Epub ahead of print)