われわれは、深達性に優れる超音波のキャビテーション現象と増感剤の併用による抗腫瘍効果が皮膚深部組織で行えるものと考えた(音響力学療法)。増感剤(ATX-70)は腫瘍細胞に取り込まれた後、超音波による音響により励起状態となり、それに伴い発生する一重項酸素がその腫瘍細胞を細胞死に誘導すると考えられている。今回、ATX-70の悪性黒色腫に対する抗腫瘍効果を培養細胞、マウスを用い検討した。 1. 増感剤ATX-70の培養細胞における音響力学的効果 (1) 培養マウスメラノーマ細胞(1×10^5)に増感剤ATX-70を添加、超音波刺激後、トリパン・ブルー染色、LDH活性測定で細胞死を評価した。 (2) 超音波照射、ATX-70添加それぞれの単独刺激においても、10〜20%程の細胞死がみられたが、10μMのATX-70添加後に30秒間超音波刺激を加える条件で、培養細胞に対する最大の音響力学効果が得られた。 2. マウスにおける音響力学作用の有効性 (1) ヌードマウス背部皮膚に2.5×10^5の培養マウスメラノーマ細胞を投与、腫瘍形成後ATX-70を局所投与、超音波刺激(1〜10分間)を行い、腫瘍の経時的変化を観察した。 (2) 1〜7日後に皮膚を採取し組織学的変化を比較検討したが、腫瘍細胞の変性・壊死は認めなかった。
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