研究概要 |
我々は、マウス骨髄由来細胞を用い、PU.1の発現量が肥満細胞一単球系の分岐を決定すること、分化した肥満細胞も単球系に変化する可塑性があることを報告してきた。AD皮膚内のランゲルハンス細胞と似た機能を持つことが判明した。本研究では、ADモデルマウスを用いて皮膚組織内に存在している樹状細胞が、転写因子PU.1の過剰な発現によって肥満細胞から分化しているかどうか、また、外来刺激抗原により肥満細胞にある内在性PU.1が活性化し、樹状細胞様の形態・機能を示すかin vivoによる検討した。BALB/cマウスに1ケ月間耳介にTNCBを外用しADモデルマウスを作成し、耳介皮膚を用い共焦点レーザー顕微鏡にてIgE受容体陽性、c-kit陽性細胞に樹状細胞特異的遺伝子分子であるCD11cを染色し3重染色を行った。また、全身TNCBを外用したADモデルマウスを作成し、皮膚と同じ由来と言われている結合組織型肥満細胞を腹腔から採取し、腹腔肥満細胞内の転写因子PU.1や単球系遺伝子発現分子等を分子生物学的に解析した。 ADモデルマウス皮膚内の浸潤している肥満細胞には、50%にCD11cの発現を確認した。またトリプターゼとPU.1の2重染色でも、トリプターゼ陽性細胞にPU,1発現した結果を得た。AD皮膚から浸潤した肥満細胞の抽出が不可能であったため腹腔肥満細胞で検討を行った結果、肥満細胞の数には変化は認めなかったが、RNAレベルでは、ADモデルマウスの肥満細胞では、CD11bとPU.1の発現増強を認めたが、CD11cの発現は認めなかった。RNAで増強している分子の蛋白による検討では、CD11bやPU.1の発現は、western-blottingや免疫染色でも確認されなかった。これらの結果よりAD皮膚に浸潤している肥満細胞はPU.1によってCD11cの発現誘導される事は確認できたが、腹腔肥満細胞では誘導されなかったことより分化の違いによって誘導に差が出ている可能性を示唆する結果であった。今後も更なる検討が必要である。
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