研究概要 |
1.一酸化窒素合成酵素の接触皮膚炎における役割 一酸化窒合成酵素(nitric oxide synthase,以下NOS)は,3つの亜種からなる。その内の一つに誘導型NOS(inducible NOS;iNOS)が知られているが,NOやiNOSがいかなるメカニズムで皮膚炎症に関与するかは不明な点が多い。今回,接触皮膚炎モデルを用いて,iNosの接触皮膚炎における役割を検討した。マウスをiNosインヒビター投与群と非投与群に分け,それぞれマウス腹部にハプテンであるDNFBを単回塗布後,耳翼腫脹を調べた。その結果,iNosインヒビター投与群では,有意に耳翼腫脹,すなわち接触皮膚炎反応が亢進していることが明らかになった。このことは,iNosが接触過敏反応において,抑制的に働いていることを示唆している。さらに,このメカニズムを解明するため,ハプテンであるFITCを塗布し,72時間後に抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞(LC)の遊走能を調べた。その結果,iNosインヒビター投与群では,ある条件下において,LCの遊走を充進させることを明らかにした。 2.一酸化窒素合成酵素のLCにおける発現性 これまでの研究成果から,LCがiNosを介した接触皮膚炎反応に関与することが判明した。ここで,LCがiNosを発現しているかが問題となる。そこで,マウス耳翼皮膚から得られた表皮細胞浮遊液を用いて,LCにおけるiNos発現をフローサイトメトリーで調べた。その結果,LCにはiNosが発現しており,その発現はLps刺激下でさらに誘導された。以上より,皮膚においてiNosはLCで産生され,接触過敏反応において抑制的に作用していることが示唆された.
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