研究概要 |
最近、T細胞が機能不全に陥った状態の時に発現されるprogrammed cell death-1(PD-1)というreceptorが様々な慢性ウイルス感染症患者のT細胞上に発現されることが報告されている。PD-1はCD28 ファミリーの1つで、主に抗原提示細胞上に発現する2種類のリガンド、programmed cell death (PD)-Ligand 1,2(PD-LL,2)を介して、T細胞の反応を負に制御する。そこで、本研究はこのPD-1に着目し、ATL患者由来T細胞におけるPD-1発現の有無あるいは機能解析を進めることを目的とした。 11名のATL患者における末梢血CD4^+,CD8^+T細胞表面のPD-1、PD-L1,2の発現をフローサイトメトリー法で解析した。その結果、正常人と比較して、患者群CD4^+CD25^-,CD4^+CD25^+T細胞上のPD-1の発現が正常人に比較して有意に増加していた。一方、CD8+T細胞では特に発現の増強は認められなかった。興味深いことに数名の患者ではCD4^+T細胞上にPD-1とPD-L1の両者が発現していた。次にATL患者の末梢血単核球を抗CD3抗体で刺激したところ、PD-1発現患者では正常人に比べて増殖能の低下を認めた。更にこの系にPD-1/PD-L1の中和抗体を添加すると、TNF-α産生能の回復が認められた。 以上の結果は極めて慢性的にHTLV-I感染を生じているCD4^+T細胞はPD-1を発現した、いわゆる疲弊状態であり、これが患者の免疫不全状態につながっている可能性が見いだされた。
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