研究概要 |
平成19年度は、皮膚免疫におけるリンパ管の役割を、in vivo, in vitro両方の系を用いて検討した。 In vivoの系では、リンパ灌流に障害のあるマウス(k-cyclinマウス)を用い、接触皮膚炎におけるリンパ管の役割を解析した。アレルゲンによる過敏性接触皮膚炎反応は、リンパ灌流に障害があるk-cyclinマウスのほうが強いことを前年度までに示したが、クロトンオイルによる一次刺激反応も、k-cyclinマウスの方が増強していた。これは炎症の種類には関係なく、リンパ管が炎症反応を鎮静化させる排水溝として重要であることを示唆している。また抗原で感作した後の所属リンパ節では、野生型マウスではT細胞の増殖が盛んで、リンパ濾胞構造が崩れていたが、k-cyclinマウスではリンパ濾胞が保たれていた。k-cyclinマウスにおいてリンパ節外で抗原提示が行われている可能性を示唆する所見と考えた。 In vitroの系ではリンパ管内皮細胞を種々のサイトカインで刺激し、樹状細胞のリンパ節への遊走に重要なCCL21の発現制御を検討した。IL-6ファミリーであるIL-6, oncostatin M, IL-31のうち、oncostatin Mだけがリンパ管内皮細胞からのCCL21産生を増強した。またシグナル伝達の解析では、oncostatin MによるErkのリン酸化が、IL-6,IL-31と比べて著しく強く、またErkのリン酸化を阻害する薬剤によってリンパ管内皮細胞からのCCL21産生の増強が抑制されることにより、このシグナル伝達系が今後の治療のターゲットとして考えられた。
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