研究課題
平成20年度は、皮膚免疫におけるリンパ管の役割を、接触皮膚炎とケモカインの産生の二つの面から検討した。まず、リンパ灌流に障害のあるマウス(k-cyclinマウス)を用い、接触皮膚炎におけるリンパ管の役割を解析した。k-cyclinマウスでは皮膚において抗原提示がなされている可能性を検討したが、経時的に組織学検討をおこなった結果、皮膚でのリンパ濾胞の形成を認めず、抗原提示を受けて増殖している細胞も検出できなかった。感作相において抗原塗布24時間後に塗布部の皮膚を除去したところ、野生型マウスでは接触皮膚炎は減弱しなかったが、k-cyclinマウスでは減弱していた。抗原塗布48時間後に抗原塗布部を除去した場合は、k-cyclinマウス、野生型マウスいずれも接触皮膚炎反応は減弱していなかった。従って野生型マウスでは感作1日以内に樹状細胞がリンパ節に遊走して感作が成立するが、リンパ潅流に異常のあるk-cyclinマウスでは、樹状細胞の遊走が遅れていて1日から2日かかることが示唆された。以上よりリンパ管に異常がある場合、樹状細胞がリンパ節に緩徐に遊走して抗原提示を行っており、皮膚において抗原提示が行われている可能性は低いと考えられた。ケモカインの産生に関しては、vitroにおいてリンパ管内皮細胞からのCCL21産生を抑制するMAPK inhibitorが、vivoにおいても有効であるかを検討した。MAPK inhibitorをマウスの皮膚に注射し、24時間後にmRNAを抽出したところ、CCL21の発現が減弱していた。また抗原感作24時間前にMAPK inhibitorを注射したところ、接触皮膚炎が減弱した。以上よりMAPK inhibitorを抗原感作部位に投与することは、接触皮膚炎の治療に有効である可能性が示された。
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