研究概要 |
我が国における外国人児童・生徒,特にブラジルなど南米諸国から来日した子どもには未就学児が多く,日本語習得の遅れ,少年犯罪の多発,増加傾向が目立っている。これらを根拠として,不良なメンタルヘルスが繰り返し指摘されている。今回,報告者は,我が国最大のブラジル人集住都市である浜松市をフィールドとして,浜松市教育委員会,浜松市外国人子ども教育支援協議会の支援を受けながら,研究協力者(浜松医科大学子どものこころの発達研究センター武井教使,渡邊知子,土屋賢治および浜松学院大学津村公博)の援助をうけ,疫学調査を行う。 対象は,浜松市内の外国人学校3校に通う9-16歳の生徒200名,および未就学児(9〜16歳)50名,対照として,浜松市内の公立小中学校に通う9〜15歳の生徒200名を収集する。18年度は,関係諸機関との折衝および未就学児への研究協力の要請とデータ収集の準備に費やした。特に,外国人学校3校(ブラジル人学校2校,ペルー人学校1校)への協力を得るために,教員を対象とした説明会を繰り返し行い,不安の除去と問題発見時の対応について入念な検討を繰り返した。また,実際に使用する自記式質問紙を,一部の生徒(N=30)を対象に予備調査として施行し,少数ながら抑うつおよび不安の高い生徒の存在が確認された。 一方,未就学児への協力依頼は困難を極めた。浜松市内数か所に,ブラジル人少年が集まる盛り場があり,そのうち1か所では研究協力者・津村が,在日ブラジル人の協力を得てフィールドワークを行ってきた。今回われわれはこのチームに入り,未就学の少年へのアプローチを試みたが,協力を得ることはほとんど期待できず,実質的に調査対象としにくいことが明らかとなりつつある。 次年度以降,未就学少年を対象から除外し,対象となる外国人学校の生徒数を増やすこととして,本格的な調査を行うこととした。
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