研究概要 |
高機能広汎性発達障害の成人では,早期診断,障害特性に基づいた理解や援助を受けられず,自己肯定感や不適応に対する情緒的反応を来しやすい。また,このような不適応事例の一部では,司法事例やNEETとの関連が指摘されるケースも少なくない。そのようななか高機能広汎性発達障害の就労支援は最も重要な課題の一つと位置づけられつつある。本研究の初年度である平成19年度は,広汎性発達障害の就労と自立を妨げる要因を,国内外の動向を踏まえた文献的検討を行うとともに,京都大学医学部附属病院精神科神経科に初診した高機能広汎性発達障害の成人を対象に,記述的データと症状特性,ならびに認知特性のうち,成人期における就労と自立を妨げる要因を明らかにした。その結果,就労の阻害要因として、併存精神疾患の存在、家族サポートの弱さ、過去のいじめや不登校などの心理社会的要因の存在があげられること、その一方で、就労支援や医療的サポートが就労を促進することなどが明らかにし、その成果を学会発表、論文、書籍等で公表した。
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