平成19年度に、統合失調症患者46名、健常対照群31名の被験者について磁気共鳴画像(MRI)並びに磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)による前部帯状回と左基底核における物質定量を実施した。また、このうち、統合失調症群33人、健常対照群22人についてcatecol-0-metyltransferase(COMT)及びBrain-Derived neurotrophic factor(BDNF)等の遺伝子について解析を実施した。現在までに、MRSで脳内のクレアチン(Cre)、グルタミン酸(GIU)、myo-inositol(ml)、N-acetylaspartate(NAA)が有意に統合失調症群で有意に低下していること、統合失調症群ではCOMT遺伝子の多系によりyアミノ酪酸(GABA)が有意に変化することが確認されている。 Gluについては、以前から統合失調症との関連が指摘されていたが、これまでに検証された研究が少なかった。当研究では、以前のMRS研究に比べ、高い測定精度を得られる高磁場MR装置を用いており、また被験者数も多いため、以前の研究よりも正確な知見を得たものと考えられる。 先行研究では困難であったGABA濃度の計測も当研究では実施しており、統合失調症群と健常対照群との間では有意差を認めなかったものの、統合失調症の病態生理で重要な役割を果たすとされるCOMTとGABA濃度に相関が見られることなど、これまでに得られなかった知見が得られている。
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