統合失調症患者30名、健常対照群25名に対し、プロトン磁気共鳴スペクトロスコピーを用いて、前部帯状回と左基底核のグルタミン酸、グルタミン、クレアチン含有化合物、ミオーイノシトール、Nアセチルアスパラギン酸、コリン含有化合物の濃度を計測した。結果は、(疾患群対対照群)×(男性対女性)という二元配置分散分析を用いて解析した。 結果は以下の通りであった。 1) 前部帯状回でのグルタミン酸とミオーイノシトールについては統合失調症群で健常対照群に比較して有意に濃度が低かった。 2) 前部帯状回でのグルタミンおよび左基底核でのクレアチン含有化合物とN-アセチルアスパラギン酸の濃度は男性群で女性群に比して有意に高く、その一方で左基底核でのN-アセチルアスパラギン酸の濃度は女性群で男性群に比して有意に高かった。 3) 男性被験者のみで解析を行うと、前部帯状回でのグルタミン酸、クレアチン含有化合物、ミオーイノシトール、N-アセチルアスパラギン酸が統合失調症群で有意に低下しているにもかかわらず、女性群のみでの解析ではいずれの化合物でも有意差を認めなかった。 以上の結果は、先行研究と合致して、統合失調症ではグルタミン酸神経代謝の変化が有ることを示唆している。また、統合失調症の病態生理にミオーイノシトール代謝の変化が関連することを示唆している。 また、いくつかの化合物では濃度に性差が認められることと、男性群のみの解析と女性群のみの解析では統合失調症に関して異なる結果が得られることが判明した。^1H-MRS研究においては、性差や被験者の男女比が結果に影響する可能性があり、今後の研究で考慮する必要がある。
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