勤労者のうつ病が社会的問題となっており、本研究で対象とした事業所でもメンタルヘルス関連で休職する職員が急増している。メンタルヘルス関連の長期休職者は平成9年度から平成16年度の間に180%増であった。特にうつ病やその関連疾患により職務不能になる人が増えており、その対策は急務である。そこでこの研究では、抑うつ傾向の強い休職者のみならず、業務上高い負荷がかかっている職員に対しても環境的、心理的側面の特徴を捉えるのに加えて、局所脳機能の特徴を調べることで、休職のリスクファクターを多角的に判定し、職域における精神保健対策の基礎データを得ることを目的としている。そのうち、19年度は、業務上の負荷により抑うつ度が高まっている職員の特徴を抽出することを主眼において研究を行った。今回用いた抑うつ度の質問紙はCES-Dという、米国の精神保健研究所で開発されたもので、合計得点は0〜60点の範囲であり、16点以上は抑うつ傾向ありと判定される。岩田らの行った1989年の調査では、日本人労働者の平均値は男性が10.5、女性が11.1であった。しかし、今回の調査ではCES-D得点は全体に高く、平均値は16.9、標準偏差は9.8であった。男性の平均は16.7、女性の平均は17.4と若干女性のほうが高い傾向があったが、検定上の有意差はなかった。勤務環境や状況と、抑うつ度との関連では、不規則勤務や出張が多いこと、そして、身体負担や孤立度が高い、職位が低い、周囲からの支援が乏しいことが抑うつ度を高くしていた。業務との関連では窓口業務、滞納整理、調整の業務が多いほど、抑うつ度か高くなる傾向があった。今後はこれらの業務の多い部署の職員を重点的に調査し、特に、脳機能と休職の関連につき、研究を進める予定である。
|