研究概要 |
勤労者のうつ病が社会的問題となっており、本研究で対象とした事業所でもメンタルヘルス関連の長期休職者は平成9年度から平成16年度の間に180%増となった。特にうつ病やその関連疾患により職務不能になる人が増えており、その対策は急務である。そこでこの研究では、抑うつ傾向の強い休職者を中心に、環境的、心理的側面の特徴を捉えるのに加えて、局所脳機能の特徴を調べることで、休職のリスクファクターを多角的に判定し、職域における精神保健対策の基礎データを得ることを目的としている。これまでに、職場環境が抑うつ度や休職の反復性に影響することを突き止めてきているが、本年度は心理学的、生物学的な検討を重点的に行った。すなわち、前頭葉機能検査(ストループテスト、nバックテスト、言語流暢課題)の成績とそれらの検査時の近赤外線分光法による脳血流評価、NEO-FFIによる性格評価、BDI-IIによる抑うつ度評価を各種グループに行った。近赤外線分光法の装置には被験者の負荷軽減のため、最近開発された携帯型装置を用いた,再休職の予防の観点から休職者の復職審査時の状況を把握し、正常対照との比較を行うとともに、その後の勤務状況の追跡を行うことで再休職の予測因子について検討した。復職審査時における正常対照との比較では、抑うつ度に有意差は認めなかったが、ストループテストの課題遂行能力は正常対照群で高いのに対し、脳血流変化ではむしろ復職審査群で高いという結果であった,また、復職者のその後の追跡では、復職後半年以内に再度休職、あるいは退職となった者は勤務を継続できている者に比べ、むしろストループ課題の反応時間が短く、遂行能力が高いことが示唆されている。しかし、年度後半に検査などを施行した被験者についてはまだ検討対象とされていないため今後さらに追跡を継続し、精度向上を図る予定である。
|