研究概要 |
研究協力者の宮裕昭(福知山市民病院心理技師)と申請者が京都府立医科大学付属病院,および福知山市民病院の老人性認知症診断センターを受診した認知症高齢者とその介護者を対象として,応用行動分析を用いた介護者指導を行った。対象となった行動は,攻撃的言語行動,不適切な性的行動,保続的な行動,そして拒食などであった。介護者へのインタビューによって,もっとも負担となる行動を選択した。不適応行動発現の前後の状況を詳しく介護者から聞き取り,不適応行動を誘発,維持している因子を取り除き,適応行動を強化する行動を介護者が取れるよう援助した。手法としては,消去,タイムアウト,分化強化,確立操作の変更といった行動分析の手法を用いた。具体的には,(1)不適応行動には対応せず,少しでも適応的な行動が見られたらそれに注目を随伴することで強化する,(2)行動が発現する時間帯が決まっていれば,その時間帯を別の適応的な行動で埋める,(3)時間を決めて患者本人とのコミュニケーションをとることで行動発現の頻度を低下させる,といった対応を介護者にアドバイスし,介護者がそういった行動をとれた場合は定期的な面接の中でそれを評価して,持続的に対応を変えられるようサポートした。これにより,不適応行動の頻度は低下し,介護者も自分の対応に自信を持つことにつながった。この結果から応用行動分析は認知症の不適応行動への対処に有用であることが示唆された。一方で,不適応行動の頻度や強度,介護者の負担感を簡便に評価する手法の開発が必要であることが明らかとなり現在検討中である。今後さらに症例数を増やすとともに,本介入が介護者の負担軽減につながっているかどうかを介入前後に介護者対象にアンケートをとることで評価していく予定である。
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