研究概要 |
[目的・方法]平成14年4月1日から6年間に、岩手県高度救命救急センター及び岩手医科大学附属病院一次二次外来を受診した精神科救急受診ケースの中から、(1)希死念慮を呈しているが自殺企図に至っていないケース(以下、希死念慮群)227件、(2)希死念慮がなく自傷行為(過量服薬を含む)後に受診しているケース(以下自傷群)482件、(3)岸らの自殺・自殺企図の診断基準を満たしているケース(以下、自殺企図群)1,436件を対象とした。対象者に対して性別、年齢、教育年数、相談の有無、通院先などを調査した。さらにICD-10診断、自殺企図前の相談の有無、過去の自殺関連行動の既往(生涯、過去1年以内)、ホームズ社会的再適応評価尺度の生活変化単位(LCU)、総合評価尺度(GAS)を調査した。[結果]各群とも女性の件数が多く、年齢は自殺企図群が有意に高く、教育年数は希死念慮群が他群に比し高値であった。GASscoreは自傷群が高値であり、LCUscoreは自殺企図群が高値であった。相談先の有無については自傷群の約7割、自殺企図群の約6割が相談先が無い状態で受診となっていた。自傷と自殺企図の手段では、自傷群の約4割、自殺企図群の約5割で薬物が用いられていたが、自傷群では刃器や刺器による割合が最も高く(43%)、自殺企図群では毒物(7%)、ガス(4%)、飛び降り(4%)なども認められた。精神科診断ではF3とF4の合計が各群とも6割以上を占めていた。自殺関連行動の既往では、希死念慮群と自傷群で6割以上がその存在を認めていた。医療機関の受診歴に関しては、希死念慮群で、約8割が精神科通院歴を有するのに対して、自殺企図群では約5割であった。[結論]自傷、希死念慮、自殺企図の各群に共通して言えるのは、相談先の整備が急務であること、F3とF4の症例に対して重点的にリスクのアセスメントと対処が必要なことである。
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