1. 経原線変化形成モデル動物を用いた蛍光画像診断システムの開発 アルツハイマー病(AD)をはじめとする神経変性疾患の病態解明の進歩に伴い、今まで行われてきた対症療法ではなく病変そのものを除去する治療アプローチの研究開発が推進されている。申請者は上記疾患の診断能力向上や、病変をターゲットとした治療効果判定に利用できるようタウタンパクで構成される神経原線維変化を可視化する客観的画像診断システムの開発に取り組んだ。蛍光イメージングシステムは被曝の無い安価で簡便なイメージング法であり、このシステムを開発するために神経原線維変化形成モデルであるP301S変異型タウトランスジェニックマウス(Neuron 2007 ; 53 : 337-51)のタウ封入体に特異的に結合する蛍光プローブをスクリーニングした。選定した蛍光プローブを上記マウスに静注して蛍光イメージング装置で観察したところ、野生型マウスと比較して病変部で有意な蛍光強度および蛍光寿命の増加を認め、マウスのタウ封入体を生体レベルで観察することに成功した。 2. 神経原線維変化を定量するための、同モデル動物を用いたmicro PETイメージング 上記の蛍光イメージングシステムでは、局在診断において簡便で有用な情報を得られるも、病変量の変化を正確に定量することは難しい。そこで上記蛍光プローブを構造修飾してpositron emission tomography (PET)用プローブを開発した。モデルマウスに静注してmicro PET scanを行ったところ、タウ封入体に一致した有意なシグナル増加を認めた。本PETプローブはヒトに応用可能であるのに加えて、神経原線維変化を標的とした治療薬開発にも画像バイオマーカーとして利用できるものと見込んでいる。
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