昨年度に引き続いて、Tc-99m MIBIの動態解析に関する研究を継続した。これまでの結果に基づいて2-コンパートメントモデルを採用し、動態解析の結果について更に詳細な検討を行った。具体的には虚血性心疾患が疑われたグループと、心疾患が疑われたが最終的に正常と判断されたグループを対象としてTc-99m MIBIを静注と同時にダイナミック収集を開始し、コンパートメントモデル解析を行った。今回の検討では、いずれのケースにおいても初期値を適切に設定することで速度定数は有限確定値に収束した。こうして得られた速度定数のうち、特に心筋血流を反映する部分の大きい血液から第一コンパートメントへの薬剤の流入定数(k1)が、虚血性心疾患グループと正常グループの間で統計学的に有意な差を持って異なる事が示された。これは、薬剤投与直後の薬物動態を数学的に詳細に検討することによって心筋血流を間接的に評価することへの可能性を示しているものと思われた。高価なPETスキャナー及びサイクロトロンが必須のPET製剤による心筋血流評価と比較すると精度の面で改善すべき点があることは否めないが、比較的多くの施設に設置済みのガンマカメラを用いて、心筋血流に対して定量的な指標を得ることができるのは臨床的にメリットがあると考える。今後はこの研究の成果を更に発展させ、心筋血流をはじめとした定量的指標の算出に関する新たな手法の確立を目指し、適宜成果を発表していきたいと考えている。なお、ここまでのデータに関してはいくつかの学会発表を行った。
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