近年、治療用のRIを結合した抗体を体内に投与し、体の内側からがんを治療する『放射免疫療法』が注目されており、臨床において悪性リンパ腫の治療薬として高い奏効率を示している。一方で、固形癌に対する放射免疫療法は、現在のところ顕著な治療効果を得るには至っておらず、固形癌に対する効果的な放射免疫療法の開発が望まれている。治療効果が得られない原因の一つとして固形癌の放射性感受性が低いことが考えられることから、放射免疫療法による細胞殺傷メカニズムを解明することにより放射線による細胞死を効率的に起こさせるような治療法を開発することを計画した。滑膜肉腫細胞および大腸癌細胞を移植した担癌マウスに^<90>Y結合抗体を投与し、腫瘍の大きさを経時的に計測したところ、滑膜肉腫では腫瘍縮小効果が認められ、ほとんどのマウスにおいて腫瘍が消失したのに対し、抗体の腫瘍集積量がより多かった大腸癌では増殖抑制効果は認められたものの、腫瘍の縮小には至らなかった。腫瘍を摘出して免疫組織学的に検討を行ったところ、滑膜肉腫においては投与早期からアポトーシスが起こっていた。またin vitroの実験として滑膜肉腫細胞および大腸癌細胞培養し、^<90>Y抗体を加えたところ、マウスを用いた治療実験結果と同様に、滑膜肉腫細胞の方が低放射能において細胞死が認められた。このことから癌細胞の放射線感受性が治療効果に大きく寄与していることが示唆された。さらに培養細胞実験でアポトーシスが起こっているかどうかを検討したところ、両細胞とも細胞死が起こる線量の放射能を加えた群においてアポトーシスが起こっていることが明らかとなった。担癌マウスおよび培養細胞においてアポトーシスを確認することが出来、本研究の成果は今後の放射免疫療法の研究の進展に寄与するものと期待される。
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