高分解能CTで微小なすりガラス濃度結節を呈する腫瘍性病変として細気管支肺胞上皮癌と異型腺腫様過形成が知られている。また、炎症性病変の一部もすりガラス濃度を呈することが知られている。高分解能CT所見からこれらの病理組織像を推定するために必要な評価項目や評価方法を確立するための手段として、3-6mm大の微小なすりガラス濃度病変におけるCT値計測による鑑別診断の可能性を検討した。対象を2000年6月から2002年5月の肺癌切除標本ないしその術前CTで副病変として発見され、病理学的確定診断のえられた3-6mm大のすりガラス濃度病変(細気管支肺胞上皮癌、異型腺腫様過形成、炎症性病変)とし、病理診断の結果を知らない2名の放射線科医がマルチスライスCTで撮影された術前高分解能CTにおいて病変が最大となるスライスで可能な限り病変の輪郭に沿った自由曲線のROIを描き平均CT値を記録した。その結果、細気管支肺胞上皮癌、炎症性病変、異型腺腫様過形成の順にCT値は低くなる傾向があり、なかでも細気管支肺胞上皮癌と異型腺腫様過形成の間には有意差が認められた。炎症性病変と細気管支肺胞上皮癌、炎症性病変と異型腺腫様過形成との間には有意差がみられなかった。CT値の計測が微小な(3-6mm大の)細気管支肺胞上皮と異型腺腫様過形成の鑑別に有用である可能性が示唆されたが、両者の間にはオーバーラップがあり、さらに炎症性病変との鑑別が不十分であることが明らかとなった。この結果はCT検診などで多く見つかる微小結節の対処方法に関し、有用な情報をもたらすことが期待される。
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