研究概要 |
FPDを用いて息を止めた状態で撮影した胸部X線動画像を対象に, 肺や心臓の血液循環に伴うX線透過性(=画素値)の変化を計測し, 血流動態および分布を評価する新しい画像診断システムを開発することが研究期間内の目標である. 昨年度は, 画像処理法の改善や臨床データ(胸部X線動画像, CT, 肺機能検査, 核医学検査)の収集を行った. 今年度の研究成果を以下に示す. 画素値の血流性変化量の分布について, 正常と異常の傾向を明らかにした. 正常症例では, 肺門部から肺末梢にかけて減少し, 左右対称である正常な肺血流分布と矛盾しない分布を示した. 異常症例では, 血流障害領域を画素値の変化量の減少としてとらえることができた. 肺血流シンチグラフィをゴールドスタンダードした臨床評価において, 肋間サイズ程度の血流障害領域を検出できることを明らかにした. 多くの症例で, 画素値の変化量の分布とRIカウントの分布には相関がみられた(0.7<r, 3 cases ; 0.4<r<0.7, 7 cases ; 0.2<r<0.4, 4 cases). 一部の症例で, 肺シンチ所見とのミスマッチがみられたが, 画像解析エラー(フレーム間位置合わせや画像変形)が原因と思われる. アルゴリズムの改善が次年度の課題である. また, 局所肺血流の異常を検出するコンピュータアルゴリズムの開発を進めている. 左右対称な分布からの逸脱を根拠に, 異常を検出できる見通しがたった. 今後, 各種解析パラメータの最適化を行い, パーソナルコンピュータで使用可能な汎用性の高いソフトウエアを開発したい.
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