本年度は、前年度に構築したシステムに対して、脳局所の関心領域(ROI)の設定および脳左右比の計算を加えた画像解析プログラムの導入を目標とした。被検者は急性期脳梗塞の中でも、梗塞発症7〜30日程度経過した亜急性期虚血性脳疾患を対象とした。開発当初、脳の両側面に対し、単純に楕円形のROIを配置するプログラムを構築した。その後、ROI内の各ピクセル値の積算値、平均値、標準誤差、最大値、最小値等の各パラメータの算出する手法を組み込んだ。また、脳左右比を計算させる過程も加えた。ここまでの過程に関しては、未だ開発段階の小動物PET装置で撮像されたラットの脳画像においても確認できた。しかし、マウスの脳画像に関しては、装置自体の解像力の影響で画像が不鮮明であり、このプログラムの効果を確認できていない。 本年度後半には、解析に不要なシルビウス裂や局所脳梗塞領域を省いてROI値を取得するプログラム開発を目指した。この開発にあたり、まずMRI画像とPET画像の適切な融合画像の作成が重要となるため多くの時間を割いた。ROI中の解析不要領域を自動的に検出するプログラムに関して、シルビウス裂の検出は3テスラMRI形態画像の頭部横断面に対し、ソーベルフィルタを用いて、エッジ強調処理を行った後、直線成分を抽出するハフ変換を利用して検出可能だと思われた。しかし、ハフ変換のプログラム構築が困難であり現在も完成には至っていない。一方、局所的陳旧性脳梗塞の検出については、造影MRI画像等の形態画像に対して、2値化を行い、閾値を1と設定して、それ以上を脳梗塞とすることで検出可能と考えられたが、脳梗塞領域が非常に小さく、被検者によっては梗塞数も多数あり、先に述べた融合画像作成の成功の有無が適切なROI値の取得に著しく影響した。したがって、本年度の最終目標であったプログラムの完成には至っておらず、特に融合画像の作成において改善の余地があり、来年度の課題であると思われた。
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