本年度は、まず、ノイズの低減を目指して電子エネルギー分析器のシールドを製作した。また、同時にオージェ電子スペクトル測定プログラムを作成した。このプログラムは、装置の電位設定と決められた貯め込み時間の間に測定された電子数の記録を繰り返し行うもので、これにより電子エネルギースペクトルの完全自動測定が可能となった。また、ファイル名自動更新機能や自動保存機能、ファイル読み出し機能などを備え、実用性の高いものとなった。これらを用いて、電子線照射された銅板から放出されるCu-MVVオージェ電子スペクトルを観測したところ、シグナル/ノイズ比に優れた電子エネルギースペクトルを観測することに成功した。この結果は、平成21年8月に開かれる原子衝突研究協会研究会において発表する予定である。 その後、電子線励起された気体試料(Arガス)から放出されるAr-LMMオージェ電子のエネルギースペクトルによってエネルギー校正を行うことを試みた。そのために、径50mmφの超音速ジェットノズルとガスセルを作成した。超音速ジェットノズルは並進ガスビームを作成するために用いられるもので、ここでは高密度ガスビームを作成するために利用した。また、ガスセルは差動排気およびノズル固定のために用いられた。これにより、Ar-LMMオージェ電子スペクトルが観測されるはずであったが、測定開始直前になって励起源である電子銃のフィラメントが破損したため、測定には至らなかった。
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