研究課題
がんの早期画像診断および機能的画像診断の手法として、「分子イメージング」が必要不可欠になっている。また、がんの分子イメージング技術の進展には、がん細胞の特性に対する生物学的知見の蓄積が求められている。一方、これまでの申請者による研究から、がん細胞は特異的に酢酸を産生することが明らかになっている。そこで、本研究では、がん特異的酢酸代謝経路の解明及びがん特異的酢酸代謝を標的とした分子イメージング法の開発、を最終的な目的として、以下の項目につき検討を行った。1. 癌特異的酢酸産生過程の生物学的機序本検討から、がん細胞は細胞質性Acetyl-CoA synthetase(ACSS2)によって触媒される特異的酢酸産生反応を有すること、ACSS2による酢酸産生は低酸素環境下で亢進すること、ACSS2による代謝はがん細胞の低酸素生存に有利に働いていることが明らかとなった。2. in vivoでのACSS2の役割本検討から、ACSS2をノックダウンすると腫瘍増殖が抑制されることが明らかとなった。このことから、ACSS2は腫瘍増殖においても重要な役割を担うことが明らかとなった。3. 癌特異的酢酸代謝イメージングの可能性上記検討から、がん細胞では、ACSS2が酢酸とAcetyl-CoAの間の可逆的反応を触媒し、代謝調節しているものと考えられた。そこで本検討では、放射性酢酸トレーサーの取り込みとACSS2の関係について調査した。その結果、がん細胞の放射性酢酸トレーサーの取り込みにACSS2が関与していることが明らかとなり、ACSS2活性を放射性酢酸トレーサーでモニターできる可能性が示された。こうした発見は、がん特異的代謝を標的としたがん診断法を開発する上で有用な情報を提供するものと考えられる。
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Cancer Science (2009) (in press)