研究課題
神経因性疼痛状態でのアセチルコリン神経系の機能変化を明らかにする目的で、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に結合する放射性プローブ[125I]5IAを用い、脳内nAChRの密度変化を調べた。神経因性疼痛モデルラットおよび偽手術ラットに[125I]5IAを尾静脈から投与し、オートラジオグラフィ法により関心領域への放射能集積を比較したところ、モデルラットの視床において、偽手術ラットの1.7倍(ρ<0.05)高い集積を認めた。視床以外の領域では有意な変化は認められなかった。次に、各群のラットから脳切片を作製し、インビトロで[125I]5IAの結合実験を行ったところ、モデルラットの視床の最大結合能(Bmax)が偽手術ラットに比べて1.5倍(ρ<0.05)増加していた。これらの結果から、神経因性疼痛状態では視床においてのみnAChR密度が増加することが明らかとなり、視床に存在するnAChRが神経因性疼痛の病態あるいは鎮痛作用に何らかの関与を有する可能性が示された。また、アセチルコリン神経機能を評価する別のプローブとして、アセチルコリン分解酵素(AChE)の活性測定用プローブである[11C]MP4Pを用いたイメージング研究を行った。ラットに[11C]MP4Pを尾静脈から投与し、小動物用PET装置を用いて撮像を行ったところ、AChE活性の高い線条体に最も高く集積し、活性の低い皮質や小脳への集積は低いことが明らかとなった。これにより、小動物用PET装置を用いることで、脳内AChE活性を非侵襲的に測定できる可能性が示された。これらの知見をもとに、次年度は視床に発現するnAChRやAChEと神経因性疼痛との関連、発現量の経時変化などを調べ、神経因性疼痛下のアセチルコリン神経機能解析と鎮痛作用部位の解明を行う。
すべて 2008
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Brain Res. 1199
ページ: 46-52
J Pharmacol Sci. 106, Suppl. 1
ページ: 63