研究概要 |
昨年度の検討により、経因性疼痛状態で視床に在するニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)密が増加することが明らかとなった。そこで本年度は視床に存在するnAChRと鎮痛作用との関連を明らかにすることを目的とした。 まず、神経因性疼痛モデルラットに5IA(1-100nmol)を側脳室内投与して鎮痛作用を検討したところ、投与15分後をピークとする濃度依存的な鎮痛作用が認められた。そこで、その検討で使用した濃度の5IAに[125I]5IAを混ぜたものを側脳室内投与し、投与15分後における受容体占有率を測定したところ、占有率と鎮痛作用との間には有意かつ強い正の相関(R=0.97, P<0.05)が認められた。 次に、視床の中でも痛覚伝達に関与すると報告のあった後外側腹側核(VPL核)に着目して検討を行った。VPL核に5IA(1-50nmol)を局所投与したところ、濃度依存的な鎮痛作用発現が認められた。その作用はnAChR拮抗薬である同濃度のメカミラミンにより阻害されたことから、nAChRを介した作用であることが示された。また、メカミラミン(1-10nmol)をVPL核に投与したところ、濃度依存的な痛覚過敏作用が認められたことから、神経因性疼痛状態では内因性のAChがVPL核に存在するnAChRに結合し、痛覚抑制に関与している可能性が考えられた。さらに、メカミラミンをVPL核に前投与してから5IAを側脳室内投与したところ、前投与なしの場合に比べて鎮痛作用が70%低下したことから、側脳室内投与された5IAはVPL核に存在するnAChRを介して鎮痛作用を発現することが示された。 以上、本研究により、視床、中でもVPL核に存在するnAChRが神経因性疼痛抑制に重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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