研究課題
放射線照射細胞においてバイスタンダー効果による細胞死、増殖抑制などが知られている。照射後の細胞間または細胞内シグナル伝達経路において、バイスタンダー効果の発現を抑制する因子の存在があるならば、その因子を抑制することでバイスタンダー効果による細胞死を大きくできるのではないかと考えた。バイスタンダー効果を抑制する因子(抵抗性因子)として、HSP90とTGF-betaをあげた。今年度の目標は、これらの因子を阻害した際、バイスタンダー効果が大きく現れるか否かを検討することであった。SPring-8放射光施設において、スリット照射を受けた細胞集団におけるバイスタンダー効果を調べた。このスリット照射は25ミクロン幅のサイズで照射するものであるが、細胞の被ばく線量をリン酸化H2AXの蛍光強度で評価したところ、スリット照射部位では線量依存的にリン酸化H2AXの蛍光強度が増加し、それ以外の領域でもリン酸化H2AXの蛍光はみられ、散乱X線の影響を受けていることが示唆された。このような条件下でラットグリオーマ細胞に対し25ミクロン幅、200ミクロン間隔で4本スリット照射し、24〜48時間後のバイスタンダー効果を調べた。その結果、照射部位に沿って、バイスタンダー効果による細胞の集積が観察され、バイスタンダー因子により細胞遊走が促された可能性が示唆された。この効果に関わる因子の影響を調べるため、同条件で照射24時間後の培養上清を非照射細胞へ処理したところ、53BP1フォーカスの平均値は増加した。このことから、照射細胞から分泌された何らかの因子は細胞遊走の誘発、及びDNA二重鎖切断の誘発を引き起こすことが示唆された。抵抗性因子としてのTGF-betaの影響について、中和抗体を処理することにより調べたが、顕著な抑制または増強効果はみられず、さらなる解析が必要であると思われる。
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