研究概要 |
多発性硬化症やヘルペス脳炎のような炎症疾患やアルツハイマー病のような変性疾患とは異なり、退形成性星細胞腫では[^<11>C]PK11195の結合が低下しており、これは末梢性ベンゾジアゼピン受容体の発現低下と関連していた。更には、低悪性度神経膠腫やdysembrioplastic neuroepithelial (DNT)でも[^<11>C]PK11195の結合が低下していることが分かった。一方で最も悪性度の高い神経膠芽腫では、[^<11>C]PK11195の結合が増加していることが報告されている。[^<11>C]PK11195の結合は、活性型ミクログリアのみならず、血球や血管内皮細胞にも結合することが報告されたことから、腫瘍内の血液脳関門の破綻や血管新生が結果に影響している可能性が考えられた。[^<11>C]PK11195の結合が低下していた症例において腫瘍実質内の血漿」放射能曲線を抽出した結果、[^<11>C]PK11195は、腫瘍内に充分到達していることが確認されたため、脳血管関門の破綻がないことのみでは[^11>C]PK11195の結合低下を説明できない。 病理学的検討では、神経膠腫とDNTでは末梢性ベンゾジアゼピン受容体の発現様式が異なることが確認されたことから、腫瘍内の血管新生が交絡因子となっている可能性はある。近年、活性化ミクログリアと血管の[^<11>C]PK11195信号を分離する解析方法が開発されており(Tomasi et al., J Nucl Med 2008;49)、この方法を用いた再解析が必要になってくる。
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