研究の目的 : 慢性心不全患者における酸化ストレスの定量化と内皮機能の予測因子として心不全における酸化ストレスの過剰状態を、実際の心不全患者で明らかにすること。 さらに、PET検査により酸素消費量の定量計測を行い、心筋好気的エネルギー代謝異常や心筋血流予備能の低下を同時に明らかにすることである。また、β遮断薬やHMG-CoA reductase阻害薬の心不全改善作用の機序として、酸化ストレスとNOの関与がいかにあるのかを冠循環系で検討し、PET検査で実際の心筋仕事効率や心筋血流予備能の改善について検討することにある。 平成20年度までの実績 : 本年度までに24例の心不全患者の同意を得てエントリーをおこなった。うち経過中に外科手術の適応と判断した1例・腎不全の進行により透析導入となった1例が脱落となったため合計22例である。そのうちβ遮断薬の導入後追跡できた症例が17例となっている。 β遮断薬の投与前の患者背景は、22例中、拡張型心筋症11例(男性8名、女性3名)虚血性心不全が9例(男性3名、女性6名)、その他の疾患が2例である。現時点での平均年齢は70.85歳。投与したβ遮断薬はcarvedilolと1例のmetoprololであった。平均投与量は8.5mg。心臓超音波検査では左室駆出率、拡張能の改善をみた。BNP値も有意に低下する傾向にあった。IL-6、TNFα、VCAM-1、PGF2αに関しては現在測定を進めている。冠循環での検討は、症例数が少なく、現時点では有意差が出ていない。
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