研究概要 |
研究の目的:慢性心不全患者における酸化ストレスの定量化と内皮機能の予測因子として心不全における酸化ストレスの過剰状態を、実際の心不全患者で明らかにすること。さらに、PET検査により酸素消費量の定量計測を行い、心筋仕事効率の低下や酸素代謝を明らかにすることである。また、β遮断薬やHMG-CoAreductase阻害薬の心不全改善作用の機序として、酸化ストレスの関与がいかにあるのかを冠循環系で検討し、PET検査で実際の心筋仕事効率改善について検討することにある 平成21年度までの実績:最終的には、35例をエントリーし、28例で解析をおこなった。そのうちβ遮断薬の導入後追跡できた症例が20例となっている。平均年齢は67.1±13歳。投与したβ遮断薬はcarvedilol(喘息合併2症例のみmetoprolol)平均投与量は10±2.5mg、HMG-COA阻害薬の使用頻度は39.1%。心筋酸素消費量を11C-asetateのクリアランス曲線の傾きで示し(Kmono)、心筋仕事量は超音波検査法より既知の方法で求め、work metabolic index (WMI)=(stroke volume index)×(systolic blood pressure)×(heart rate)/Kmono,として算出した。治療により心筋仕事効率の改善した群と改善の得られなかった群に分け、各指標の解析をおこなった。また大動脈および冠静脈洞でのIL-6・TNFα・VCAM-1の値をそれぞれ検討した。さらに酸化ストレスの指標としてPGF2αを測定した。両群において、虚血性心疾患の比率、HMG-CoA阻害薬の使用頻度および投与量、β遮断薬投与量には有意差は認めなかった。仕事効率の改善群・非改善群で開始時の左室駆出率は34±4%・34±4.1%、治療後は50±6.8%・45±5.7%であった。また、心不全患者では酸化ストレス過剰状態にあり、TNFαの大動脈-冠状静脈での濃度差が大きく、PGF2α値とも相関した。さらに仕事効率の改善群は、TNFα値が治療後に低下しており、非改善群では逆に増加していた。
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