研究概要 |
現在の3次元線量分布計算では,不均質物質に対してより高精度の計算が可能であるモンテカルロ法を用いた場合,数十分または数時間を消費する。モンテカルロ法を他のアルゴリズムによる計算結果の検証用として用いる場合,この計算時間のオーダーの違いガボトルネックとなる。そこで,本研究ではモンテカルロ法による線量分布計算をCPUに内蔵されるSIMD並列演算機能,GPU(ビデオカード)を積極的に用いて行った場合の計算時間の短縮について検討した。 加速器のモンテカルロ計算の高速化では,計算精度を落とさないこと,MLC等のシミュレーションが可能であること,人体内を高速に計算可能なことが課題となった。本研究では基本的にECSnrcアルゴリズム自体の改変は行わないことに注意した。またGPUでも単精度浮動小数点で再帰的な物理演算を行うことが可能となってきたことから,SIMDと同様ループを含むルーチン対してGPUの並列演算機能をOpenGLのGLSLとCgを用いて別ルーチンとし実装し,新しい線量分布計算システムを開発した。 6MVX線の直線加速装置と,40×40×40cm^3の水ファントムを用い,実測PDD,BEAMnrcMPにより計算されたPDD,OARと本手法によるPDD,OARを比較した結果,3%以内の実測との一致,1%以内の統計誤差でBEAMnrcMPに比べて10部以上の高速化が実現できた。この研究の成果については国内の学会,会議で発表された。本研究の今年度の成果は,GPUが安価になってきたこと,本研究での並列アルゴリズムの開発等により,より安価に超並列による高速化が実現できることを示唆し,臨床への応用が期待できる。このシステムの開発では,GPUに関して高速化と高精度化に大きな可能性があり,GPUのプログラムと,モンテカルロの並列演算アルゴリズムの改良により,今後現状の4部以上の高速化を目指す。
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