研究概要 |
【研究の目的】膵癌に対する膵動注化学療法における薬物動態を解明する。【対象と方法】体重40kg程度のブタを用いて,まずブタの膵動脈の血管解剖と血行動態の確認を行った。これまでブタの膵臓の支配血管や血行動態は不明な点が多く,聖書や文献の記載も少ない。今回,血管造影装置(DSA)を用いて上腸間膜動脈と腹腔動脈からの血管撮影を行い,さらに胃十二指腸動脈,背膵動脈,脾動脈の選択的造影検査を施行した。また,開腹下に膵を露出し,各動脈からの色素注入(Indigocamine 0.4%)を行うことで各膵動脈の支配膵実質領域を直視下に確認した。次に,ブタ膵動注モデ(平成19年度はN=8)をもちいて,静注群,腹腔動脈単純動注群,上腸間膜動脈閉塞下(血流改変併用)腹腔動脈動注群に分類し,5-FU(20mg/kg)を投与。投与開始前,10分,30分,60分後に膵CA分布領域,膵SMA分布領域十二指腸組織,肝の組織1g採取と末梢血(4ml)を採取。検体の測定はBML社に委託し,血中濃度測定はHPLC法で,組織移行測定は半定量的RT-PCR法でおこなった。【結果】ブタ膵の血管支配に関しては,膵頭部は腹腔動脈側が胃十二指腸動脈,背膵動脈が支配し,上腸間膜動脈側からも背膵動脈が支配する血流2重支配であることが明らかになった。これはヒトの膵血流動態と類似しており,ブタ膵動注モデルは膵癌に対する膵動注化学療法における薬物動態の分析に有用であると判断された。膵動注の薬物動態に関しては平成20年度に追加実験をおこない,統計学的分析を加えた上で結論づける予定である。
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