研究概要 |
【目的】膵癌に対する5-FU膵動注の薬理学的有利性および血流改変術の必要性を実証する。【対象と方法】ブタ9頭をGroup I(静注群)、Group II(腹腔動脈単純動注群)、Group III(血流改変併用腹腔動脈動注群)の3群(各3頭)に分類。腹腔動脈(CA)および上腸間膜動脈(SMA)造影を施行後、開腹下に膵頭部から鈎部の膵実質を背側から露出させ、CAおよびSMAから色素を注入し分布範囲を確認した。Group IIIではバルーンカテーテルでSMA起始部を閉塞させ、閉塞前後のCAからの濃染範囲の変化を観察した。5-FU(20mg/kg)はGroup Iでは内頸静脈から、Group II, IIIはCAから10分間で投与し、0, 10, 30, 60分後に末梢血および肝、膵頭部、膵鈎部、十二指腸の組織内濃度を測定し、AUCを算出した。【結果】全頭で膵実質は膵頭部がCAから、膵鈎部がSMAから分布し、血流の2重支配が確認された。Group IIIではSMA起始部閉塞により膵鈎部側に分布範囲の拡大がみられ血流の一本化に成功した。Group II, IIIの肝、膵頭部、十二指腸組織内AUCはGroupIより有意に高く、Group IIIでは膵鈎部でのAUCがGroup I, IIより有意に高かった。【結語】1. CAからの膵動注化学療法は、膵実質のみならず肝の5-FU組織内濃度を上昇させ、薬理学的有利性が証明された。2. 膵血流のCAへの1本化は、膵鈎部にも有意に高い組織内濃度をもたらし、血流改変の必要性が実証された。3. 動注は十二指腸組織内濃度も有意に高く、合併症に留意する必要がある。
|