研究概要 |
本研究では電磁エネルギーを利用した癌温熱療法(ハイパーサーミア)の確立を目指して、形状記憶機能を有する針電極型ハイパーサーミア装置の開発を目的としている. 以下に本年度の主な成果を示す。 (1)マッチング機能付の高周波電源装置の設計:加温領域を拡大させることを目的とし、13.56MHの発信器の信号を高周波電力増幅器により最大150Wに増幅させて、その電磁エネルギーを被加温物に印加できる高周波電源装置を試作した。さらに、加温実験の際には生体組織(脳腫瘍)で電磁エネルギーを有効的に消費するために、高周波電源側と生体組織側のインピーダンスの差をほぼ零にする必要がある。そのための、インピーダンス整合装置も高周波電源装置に内蔵した。 (2)形状記憶機能を有する針電極の試作:電気炉により未記憶状態の形状記憶合金を400℃〜500℃程度で熱処理し、形状記憶を施した。具体的に説明すると、形状記憶合金の先端から2cm程度がL字型およびX字型に変形する形状記憶合金製の針電極を試作した。なお,この針電極先端の2cm程度の部分は35℃から変形を開始し(As点)、43.5℃にその形状が変形し終える(Af点)機能を有している。 (3)形状記憶機能を有する針電極の電磁界分布および温度分布の理論的検討:有限要素法を用いたコンピュータシミュレーション手法により、L字型およびX字型の形状記憶機能を有する針電極の電磁界解析、温度分布解析を実施した。その結果、形状記憶機能を有する針電極を使用することにより、その加温領域が、従来の針電極をよりも拡大することを確認した。
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