研究概要 |
本研究の目的は,マルトリンパ腫初発例の末梢血を治療前後で採取した表面マーカー解析で,CD20・CXCR3陽性細胞の推移を評価することで,結果的にMALTリンパ腫の腫瘍マーカーを推察することができるかもしれないということだった.本研究が始まった四年前を前後として,血液内科的にMALTリンパ腫に対して抗CD20抗体であるリツキシマブを標準的に用いるようになり,リツキシマブの効果にてCD20陽性細胞が消失することとなった,このため,MALTリンパ腫症例において治療前後でCXCR3・CD20陽性細胞の推移をみることが不可能な状況が確認され,研究方針の多大なる変更を余儀なくされた.昨年の報告ではこうした状況を危惧し,リンパ腫の細胞学的悪性度とFDG-PETの取り込み度合いをみることで,metabolic(biological)tumor markerとして用いることが可能でないかと推察した.本年度は症例の多いDLBCL(diffuse large B-cell lymphoma)で検討した.細胞学的悪性度の低いとされるgerminal center由来のDLBCL 37例とgeminal center間から発生した悪性度の高いDLBCL 59例をCD10,MUM-1,bcl-6の免疫染色を全例行うことにより判別した.発生由来ではFDGの取り込み程度を示すSUVmax値に差は認めていなかった.しかし,GLUT-1(glucose transporter)では陽性細胞割合とSUVmax値に有意な相関関係を示し,GLUT-3でも弱い関連性があるという結果となった.他に染色したglucose transporterは明らかな関連性を示していなかった.これは,悪性リンパ腫(DLBCL)に関してのFDG取り込み程度は細胞学的悪性度をみているとは言い難く,結果として解糖系の亢進程度をみているにすぎないという結果を示した.リンパ腫におけるFDG-PETの意味合いを示した論文は非常に少なく,今回我々が発見した事項についての報告は調べ得た範囲でみられない.この結果をふまえて平成22年10月のリンフォーマ井戸端会議(福岡)で報告した.その後,英語論文を作成し,現在投稿中の状態である.
|