研究概要 |
Steroid and xenobiotic receptor(SXR)は核内ホルモン受容体スーパーファミリーに属するリガンド依存性の転写因子である.これまでに,我々は乳癌細胞においてSXRがシトクロームP450 3A4蛋白(CYP3A4)およびP-糖タンパク(MDR-1)の発現を活性化することを明らかにした.薬物代謝のphase IIは抱合でありUDP-gulucuronosyltransferase(UGT)が担うことから,本研究では乳癌細胞におけるUGTとSXRの関係について注目した.UGT1A1はエストロゲンを代謝する酵素として知られている.UGT1A4およびUGT2B7は乳癌治療薬のタモキシフェンを代謝する酵素である.我々は乳癌細胞株におけるUGT1A1, UGT1A4, UGT2B7の発現をmRNAレベルで確認した.肝細胞癌の培養細胞レベルではSXRによりUGT1A1の発現がコントロールされるという報告が存在する.我々は乳癌細胞株を用いてUGT1A4がSXRにより発現増加することをRT-PCRで確認した. 乳癌組織におけるUGT1A1, UGT1A4およびUGT2B7の発現を調べる目的で臨床研究を行った.平成19年から20年度にかけて当院にて手術を行った乳癌症例のうち70症例を用いて,Real-time RT-PCRで測定したところ,UGT1A4とSXRの発現には相関を認めなかった.また,グルココルチコイド受容体と負の相関を認めた.ほか,UGT1A1もSXRとは相関を認めず,アンドロゲン受容体と正の相関を認めた.UGT2B7は測定困難であった.乳癌組織におけるSXRの発現はリンパ節転移陽性群,核異型度の高い群,エストロゲン受容体の陰性群・HER2陽性群で有意に低かった.
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