補助人工心臓は、重症心不全患者に対して主に心臓移植への橋渡しとして用いられる。装着中の患者は、長期にわたる待機期間と行動制限、様々な合併症などの問題に直面しており、しばしば精神的な不安定さが指摘される。このような患者の精神的・心理的ケアは難しく、主要心移植施設の医療従事者は大きな課題と認識しているが、患者の心理社会的状況の分析研究はこれまでに非常に少ない。本研究では補助人工心臓を装着中あるいは装着歴のある患者を対象に、半構造化インタビューを施行して、社会学・社会医学の質的分析の手法を用いて分析を行うことで、人工臓器、臓器移植、重症心不全という視点を含めて、補助人工心臓装着の心理社会的状況を明らかとすること、さらに有効なリエゾン構築方法について検討することを目的とする。平成19年度は、東京大学医学部附属病院にて、補助人工心臓装着されている患者および装着歴のある患者(補助人工心臓装着中、補助人工心臓から離脱し通院あるいは入院中、補助人工心臓装着を経て心臓移植術施行し通院あるいは入院中)を対象に、患者1名につき60分程度の半構造化インタビューを行った。インタビュー内容は対象者の了解を得た上で録音して逐語録を作成し、質的研究手法の一つであるGrounded Theory Approachの手法に基づき、発言内容のコード化と統合(カテゴリー化)を行って解析を進行している。来年度にも計画通りさらに引き続き研究参加者を募り、インタビューおよび解析を進める予定である。
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