食道癌の発癌に関与するmiRNAを同定するために19年度は以下の実験を行った。 1.臨床3検体と細胞株9種(高中低分化型各3種)についてのマイクロアレイ解(787種) (1)臨床検体はインフォームドコンセントの得られたそれぞれ患者の腫瘍組織と正常組織から抽出したRNAを用いて解析を行った。その結果から臨床3検体間で共通に増減しているmicroRNA(miRNA)は見られなかった。しかしいずれかの2検体で腫瘍組織特異的に発現が増加しているもの4種、低下しているもの5種が確認された。 (2)細胞株9種では高・中・低分化型をそれぞれ比較することにより発現の増減を確認した。高分化型をリファレンスにした場合、発現が増加しているものはそれぞれ中分化型で9種、低分化型で11種が確認された。この中には共通して発現が増加しているmiRNAがあることから、脱分化に関与している可能性が示唆される。 また中分化型をリファレンスにした場合、低分化型で増加しているmiRNAは3種であった。 2.定量PCRキット{TaqMan MicroRNA Assays}を用いたスクリーニング 臨床5検体について行った結果、腫瘍組織特異的に発現の増減しているmiRNAを確認することができた。しかしマイクロアレイ解析の787種のmiRNAをカバーすることが出来なかったので、マイクロアレイ解析と全て同じ結果とはならなかった。今後の予定として、変動の確認されたmiRNAについてそれらの標的遺伝子の検索とその機能解析をしていきたいと考えている。
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