今後の膵島移植の課題は1ドナー/1レシピエントの実現にあり、移植急性期の膵島障害の軽減と移植晩期の生着膵島の再生誘導を目的として、膵島移植・胃粘膜下注入法の移植効果を検証し、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)導入による不死化膵島グラフトの作製を試みた。 同系ラット膵島移植モデルで、従来の経門脈的肝内移植法と胃粘膜下注入法の移植効果を比較検討した。レシピエントはF344ラットを使用しStreptozotocinで糖尿病を誘導した。F344ラットのドナーからCollagenasetechniqueで膵島を単離し、レシピエントに2ドナー膵島約400個を開腹下に胃前壁を切開し、胃内腔から後壁粘膜下層に注入した(胃粘膜下群)。従来の2ドナー経門脈的膵島移植(経門脈群)と移植後膵島機能を評価し比較検討した。 移植後随時血糖は胃粘膜下群でも移植後比較的早期から低下するものを認めたが、経門脈群に比して有意に良好な移植効果は現時点では認めていない。今後、胃粘膜下注入法の改良、工夫が必要である。胃粘膜下の移植膵島の機能、形態、生着状態を調べるためにレシピエントラットの胃を摘出し、抗インスリン抗体で免疫染色を行い、機能的に生着した膵島を一部には認めている。今後、経門脈群のレシピエント肝を摘出して免疫染色を行い、移植膵島の機能、形態、生着のおいて胃粘膜下群と比較検討する予定である。 また、単離した膵島グラフト(β細胞)を移植前に培養し、TERTを発現するレトロウイルスベクターを導入することにより、膵島細胞の不死化、増殖、再生誘導を現在試みている状況である。
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